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さて矢立峠やたてとうげを踰え、四十八川を渡って、弘前へは往くのである。矢立峠の分水線が佐竹、津軽両家の領地界ざかいである。そこを少し下くだると、碇関いかりがせきという関があって番人が置いてある。番人は鑑札を検してから、始はじめて慇懃いんぎんな詞ことばを使うのである。人が雲表うんぴょうに聳そびゆる岩木山いわきやまを指ゆびさして、あれが津軽富士で、あの麓ふもとが弘前の城下だと教えた時、五百らは覚えず涙を翻こぼして喜んだそうである。
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