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保さんの所蔵の「抽斎手記」に、『医心方』の出現という語がある。昔から厳おごそかに秘せられていた書が、忽たちまち目前に出て来た状さまが、この語で好く表あらわされている。「秘玉突然開※(「木+續のつくり」、第4水準2-15-72)出ひぎょくとつぜんはこをひらきていづ。瑩光明徹点瑕無えいこうめいてつてんかなし。金龍山畔波濤起きんりょうさんはんはとうおこり。龍口初探是此珠りょうこうはじめてさぐりしはこれこのたま。」これは抽斎の亡妻の兄岡西玄亭が、当時喜よろこびを記した詩である。龍口りょうこうといったのは、『医心方』が若年寄わかどしより遠藤但馬守胤統たねのりの手から躋寿館に交付せられたからであろう。遠藤の上屋敷は辰口たつのくちの北角きたかどであった。
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