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この議に反対したものは、独ひとり浜町の隠居のみではなかった。当時江戸にいた藩士の殆ほとんど全体は弘前に往ゆくことを喜ばなかった。中にも抽斎と親善しんぜんであった比良野貞固さだかたは、抽斎のこの議を唱うるを聞いて、馳はせ来きたって論難した。議善よからざるにあらずといえども、江戸に生れ江戸に長じたる士人とその家族とをさえ、悉ことごとく窮北の地に遷うつそうとするは、忍べるの甚しきだというのである。抽斎は貞固の説を以て、情に偏し義に失するものとなして聴かなかった。貞固はこれがために一時抽斎と交まじわりを絶つに至った。
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