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大人は富士を脊負うて、いずれへか持って行こうとしたり、または一夜に大湖を埋めようとして簣きを以て土を運んだ。その簣の目をこぼれた一塊が、あの塚だこの山だという話はどこにでもある。つまりは古くからの大話の一形式であるが、注意すべきはことごとく水土の工事に関聯し、ところによっては山を蹴開けびらき湖水を流し、耕地を作ってくれたなどと伝え、すこぶる天地剖析ほうせきの神話の面影を忍ばしむるものがある。古い言い伝えには相違ないのである。大きい行止まりは加賀国の大人の足跡、東は越中境栗殻山くりからやまの打越に一つ、次には河北郡木越きごしの光林寺の址あとという田の中、次には能美郡波佐谷はさだにの山の斜面、すなわちこの国を三足であるいた形である。いずれも指の跡までが分明で、下に岩でもあるものか、田の中ながらそこだけは草も生えない。それから壱岐の島の国分の初丘にあるもの、爪先つまさき北に向かって南北に十二間、幅は六間で踵のところが二間、これを大の足跡と呼んでいる。大昔に大という人、九州から対馬へ渡ろうとして、この中間の島に足を踏立てた。その跡であるという。少し窪んで水が出ている。こんなところは附近に多いと『壱岐名勝図誌いきめいしょうずし』には記している。
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