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山に入って山姥のオツクネなるものを拾った故に、物持にもなったかわり鬼子も生まれたという話には更に一段と豊富なる暗示を含んでいるらしい。山姥はなるほど多くの神童の母であり、同時にまた珍しい福分ふくわけの主ぬしでもあったことは、次々にもなお述べるように、諸国の昔からの話の種であったが、特に常人の女性に角ある児を産ましめるために、彼女が干渉すべき必要はなかったはずである。察するところ本来この不可思議の財宝は、むしろ不可思議な童子に伴うて神授せらるべきものであったのを、人が忘却してこれを顧みぬようになってから、山中の母ばかりが管理をすることとなったのであろう。この想像を幾分か有力にするのは、ウブメ(産女)と称する道の傍かたわらの怪物の話である。支那で姑獲こかくと呼ぶ一種の鳥類をこれに当てて、産で死んだ婦人の怨魂えんこんが化成するところだの、小児に害を与えるのを本業にしているのと、古い人たちは断定してしまったようだが、それでは説明のできない著しい特徴には、少なくとも気に入った人間だけには大きな幸福を授けようとしていた点である。すなわちウブメ鳥と名づくる一種の怪禽かいきんの話を別にして考えると、ウブメは必ず深夜に道の畔あぜに出現し赤子あかごを抱いてくれといって通行人を呼び留める。喫驚びっくりして逃げてくるようでは話にならぬが、幸いに勇士等が承諾してこれを抱き取ると、だんだんと重くなってしまいには腕が抜けそうになる。その昔話はこれから先が二つの様式に分かれ、よく見ると石地蔵であった石であったというのと、抱き手が名僧でありウブメは幽霊であって、念仏または題目の力で苦艱くかんを済すくってやったというのとあるが、いずれにしても満足に依託いたくを果した場合には、非常に礼を言って十分な報謝をしたことになっている。仏道の縁起に利用せられない方では、ウブメの礼物は黄金の袋であり、または取れども尽きぬ宝であった。時としてその代りに五十人百人力の力量を授けられたという例も多かったことが、佐々木君の『東奥異聞とうおういぶん』などには見えている。『今昔物語』以来の多くの実例では、ウブメに限らず道の神は女性で喜怒恩怨が一般に気紛きまぐれであった。或る者はこれに逢うて命を危くし、或る者はその因縁から幸運を捉とらえたことになっている。後世の宗教観から見るときは甚だ不安であるためにだんだんと畏怖の情を加えたのだが、神に選択があり人の運に前定があったと信じた時代には、これもまた祷いのるに足りた貴き霊であったに相違ない。つまりは児を授けられるというのは優れた児を得るを意味し、申し児というのは子のない親ばかりの願いではなかったのである。そうして山姥のごとき境遇に入ってでも、なお金太郎のごとき子を欲しがった社会が、かつて古い時代には確かにあったことを、今はすでに人が忘れているのである。
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