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例の平然たる御態度で、さりげなくおつしやるのでした。その時は、末座に控へてゐる私まで、ひやりと致しました。真に思ひ切つたる豪胆無比の御裁決、三浦さまほどの御大身も何もかも、いつさい、御眼中に無く、謂はば天理の指示のままに、さらりと御申渡しなさる御有様は、毎度の事とは申しながら、ただもう瞠若、感嘆のほかございませんでした。なるほど、そのお代官が牧士などの地下職人を相手に喧嘩をはじめるとは奉行としても気のきかない話で、将軍家からさうおつしやられてみると、いかにも、もつとも、理の当然の御裁決には違ひございませぬが、でもまた、私たち凡俗のものにとつては、いやしくも三浦平六兵衛尉義村さまともあらうお人を、このやうに無雑作に、しかもやや苛酷と思はれるほどに御処置なされては、あとでどんな事になるだらうかとそれが心がかりでないこともございませんでした。さらにまた、六月のはじめ、和田左衛門尉さまが三味庄の地頭代を捕縛なされ、それに就いて少しややこしい事が起りました。越後国三味庄の領家の雑掌が盗賊の為に殺害せられ、その盗賊は逐電して何者とも判明しなかつたので、左衛門尉さまは、とにかくその庄の地頭代を召取らせ詮議を加へる事に相成つたところが、その地頭代の親戚の者たちが不服を称へ、内々手をまはして尼御台さまに訴へ申し上げたので妙に気まづい事になつてしまひました。その頃、将軍家は御病後の、まだお床につかれて居られましたが、たとひ御病床にあつても、まつりごとを怠るやうな事の決して無いお方でございましたので、その日もおやすみのままで相州さまから、諸国の訴訟の事など、さまざま御聴取になつて居られましたが、そのところへ、おつきの女房の駿河の局さまが口を引きしめてそろそろと進み出て、改めて一礼の後、
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