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一年ほど過ぎて、今の母は来つ。それより後は何もかも変わり果てたることになりぬ。先の母はれっきとしたる士さむらいの家より来しなれば、よろず折り目正しき風ふうなりしが、それにてもあのように仲よき御夫婦は珍しと婢おんなの言えるをきけることもありし。今の母はやはりれっきとした士さむらいの家から来たりしなれど、早くより英国に留学して、男まさりの上に西洋風の染しみしなれば、何事も先とは打って変わりて、すべて先の母の名残なごりと覚ゆるをばさながら打ち消すように片端より改めぬ。父に対しても事ごとに遠慮もなく語らい論ずるを、父は笑いて聞き流し「よしよし、おいが負けじゃ、負けじゃ」と言わるるが常なれど、ある時ごく気に入りの副官、難波なんばといえるを相手の晩酌に、母も来たりて座に居しが、父はじろりと母を見てからからと笑いながら「なあ難波君、学問の出来でくる細君おくさんは持つもんじゃごわはん、いやさんざんな目にあわされますぞ、あはははは」と言われしとか。さすがの難波も母の手前、何と挨拶あいさつもし兼ねて手持ちぶさたに杯さかずきを上げ下げして居しが、その後のちおのが細君にくれぐれも女児むすめどもには書物を読み過ごさせな、高等小学卒業で沢山と言い含められしとか。
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