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鮎は洗って笊ざるにあげてあった。よく肥えた、五寸から六寸ほどの、みごとな鮎が十七尾あり、金色をひそめた薄墨色の肌は、まだ生きているかのようにぬめぬめと光を帯びていて、手に取るとさわやかに川水が匂うようであった。下女たち二人が来て手伝い、それらを金串かなぐしに刺してから、宇乃は炉の火のぐあいを直して、鮎を焙あぶりはじめた。焦げめをつけず、身の脂あぶらをぜんたいにまわるように、そして芯しんまで火熱をとおすには、榾火のかげんにこつがある。江戸に育った女性たちは、一般に川魚を好まない。宇乃の母も好まなかったが、宇乃はそうではなかった。この船岡へ来たのが寛文二年だから、もうまる六年になるわけだが、初めて川魚を焼く匂いを嗅かいだとき、郷愁のようななつかしさを感じた。うまそうなというよりも、忘れていた遠いものにめぐりあった、という感じであった。
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