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東京のような繁華の町中でも、夜分だけは隠れんぼはせぬことにしている。夜かくれんぼをすると鬼に連れて行かれる。または隠かくし婆ばあさんに連れて行かれるといって、小児を戒める親がまだ多い。村をあるいていて夏の夕方などに、児こを喚よぶ女の金切声かなきりごえをよく聴くのは、夕飯以外に一つにはこの畏怖いふもあったのだ。だから小学校で試みに尋ねてみても分わかるが、薄暮に外におりまたは隠れんぼをすることが何故に好よくないか、小児はまだその理由を知っている。福知山ふくちやま附近では晩に暗くなってからかくれんぼをすると、隠し神さんに隠されるというそうだが、それを他の多くの地方では狸狐といい、または隠し婆さんなどともいうのである。隠かくし婆ばばあは古くは子取尼ことりあまなどともいって、実際京都の町にもあったことが、『園太暦えんたいりゃく』の文和二年三月二十六日の条に出ている。取上とりあげ婆ばばあの子取りとはちがって、これは小児を盗んで殺すのを職業にしていたのである。なんの為にということは記してないが、近世に入ってからは血取ちとりとも油取あぶらとりとも名づけて、罪なき童児の血や油を、何かの用途に供するかのごとく想像し、近くは南京皿なんきんざらの染附そめつけに使うというがごとき、いわゆる纐纈城こうけちじょう式の風説が繰り返された。そうしてまだ全然の無根というところまで、突き留められてはいないのである。
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