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自由芸術として第一に模様は「いき」の表現と重大な関係をもっている。しからば、模様としての「いき」の客観化はいかなる形を取っているか。まず何らか「媚態」の二元性が表わされていなければならぬ。またその二元性は「意気地」と「諦あきらめ」の客観化として一定の性格を備えて表現されていることを要する。さて、幾何学的図形としては、平行線ほど二元性を善く表わしているものはない。永遠に動きつつ永遠に交わらざる平行線は、二元性の最も純粋なる視覚的客観化である。模様として縞しまが「いき」と看做みなされるのは決して偶然ではない。『昔々物語』によれば、昔は普通の女が縫箔ぬいはくの小袖こそでを着るに対して、遊女が縞物を着たという。天明てんめいに至って武家ぶけに縞物着用が公許されている。そうして、文化文政ぶんかぶんせいの遊士通客は縞縮緬しまちりめんを最も好んだ。『春告鳥』は「主女に対する客人のいで立ち」を叙して「上着うわぎは媚茶こびちゃの……縞の南部縮緬、羽織はおりは唐桟とうざんの……ごまがら縞、……その外ほか持物懐中もの、これに準じて意気なることと、知りたまふべし」といっている。また『春色梅暦』では、丹次郎たんじろうを尋たずねて来る米八よねはちの衣裳いしょうについて「上田太織うえだふとりの鼠の棒縞、黒の小柳に紫の山まゆ縞の縮緬を鯨帯くじらおびとし」と書いてある。しからば、いかなる種類の縞が特に「いき」であろうか。
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