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母に別れてすでに十年ととせにあまりぬ。十年ととせの間、浪子は亡き母を忘るるの日なかりき。されど今日このごろはなつかしさの堪たえ難きまで募りて、事ごとにその母を思えり。恋しと思う父は今遠く遼東にあり。継母は近く東京にあれど、中垣なかがきの隔て昔のままに、ともすれば聞きづらきことも耳に入る。亡き母の、もし亡き母の無事に永らえて居たまわば、かの苦しみも告げ、この悲しさも訴えて、かよわきこの身に負いあまる重荷もすこしは軽く思うべきに、何ゆえ見すてて逝ゆきたまいしと思おもう下より涙はわきて、写真は霧を隔てしようにおぼろになりぬ。
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