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津軽の山人は角力を取ったというのみで餅をどうしたという話は残ってないが、秋田の方へ越えてみると、この二つの事件も結びついている。これも小田内通敏氏の談であるが、五城目ごじょうのめ近在の木樵でかねて田舎相撲の心得ある某、或る日山で働いて木を負うて立とうとすると不意に山男が出てきて相撲を取ろうと言うて留めた。そこで荷を再び下に卸して力を角かくし一番はまず彼を投げたら強いと褒ほめてくれた。二番目にはわざと勝を譲って還ろうとしたが、山男は少し待ってくれと言って、更に二三人の仲間を連れてきて取らせたので、いずれも一番は勝ち一番は負けて別れてきた。それが縁になってその後もおりおり出会ううちに、或る時いつ幾日にはその方の家へ遊びに行く。家の者を外へやり、餅を搗いて待っていよというのでその通りにして一斗ほどの餅を振舞うと、数人の山男が悦んで終日遊んで帰った。それはよかったがその後もおりおりやってきて、酒を飲ませろの何のと言うために、ついにはその煩しさに堪えず、これを気に病んで久しく寝ているようなことになった。村の人たちはこれを見て、山男などと附合つきあいをするのは、いずれ身のためには好よくないことだと話し合っていたそうであるが、もしこの樵夫にせめて松任の餅屋ほどの気働きばたらきがあったら、神経衰弱などにはならずにすみそうなものであった。しかも因縁ばかり永く続いて人に信心のやや薄れた場合に、尋常一様の手段では元もと奉仕した神と別れることが難むつかしかったということは、しばしば巫術ふじゅつの家について言い伝えられた話であった。餅が化して白い小石になったということと、石を火に焼いて怪物を攻めたということとは、ともに古くからある物語には相異ないが、山人の場合には二つの話が合体して、あまり毎晩餅ばかり食いにくるので、のちには閉口して白い丸石を囲炉裏いろりに焼き知らぬ顔をして食わせて見ると、火焔かえんを吹いて飛びだして去ったとか、またはその祟たたりで大水が出たのが年代記にあるところの白髭水しらひげみずだなどと、いずれも皆一旦の好意とその後の不本意な、絶縁とを伝説する地方が多いのは、或いは何かこの方面の信仰の次々の変化を暗示するものではないかと思う。
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