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戦いがなくなり国中が統一してしまうまでは、こういう義理固い無茶者は、求めても養って置く必要が時としてはあった。いわば百姓の家に生まれたのが損だったのである。肥後の川上彦斎かわかみげんさいの伝を見てもそう思うが、江戸幕府の初頭に刑せられたあぶれ者、大鳥一兵衛などについてはことにその感が深い。ほんのもう四十年か五十年早く生まれていたら、彼は大名になったかも知れぬのである。一兵衛自身の身の上話というのは、『慶長見聞集けいちょうけんもんしゅう』巻六に出ている。「武州大鳥といふ在所に利生りしょうあらたかなる十王まします。母にて候そうろふ者子無きことを悲み、此十王堂に一七日籠こもり、満ずる暁あかつきに霊夢の告つげあり、懐胎して十八月にしてそれがし誕生せしに、骨柄こつがらたくましく面の色赤く、向ふ歯あつて髪はかぶろなり。立つて三足歩みたり。皆人是これを見て悪鬼の生れけるかと驚き、既に害せんとせし処に、母之これを見て謂ひけるやうは、なう暫く待ちたまへ思ふ仔細しさいあり、是は十王への申し児なれば、其そのしるし有りて面の色赤し云々と申されければ、我を助け置き幼名を十王丸と謂へり」とある。祈る仏も多くあった中に、特に閻魔えんまに児を申したというのは、別に近代の母親の相続せざる、一種戦国時代相応の理想があったためかと思う。そうではないまでも大王が事を好み、余計な迷惑を信徒に与えんとしたのでないことだけは、一般にこれを認めていたように見えるが、しかもそれは京都とその附近で、盛んに牙ある赤子を撲殺ぼくさつした時代よりも、またずっと後年の田舎の事であった。
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