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時はすでに午後四時過ぎ、夕烏ゆうがらすの声遠近おちこちに聞こゆるころ、座敷の騒ぎを背うしろにして日影薄き築山道つきやまみちを庭下駄にわげたを踏みにじりつつ上り行く羽織袴はおりはかまの男あり。こは武男なり。母の言ことば黙止もだし難くて、今日山木の宴に臨みつれど、見も知らぬ相客と並びて、好まぬ巵さかずき挙あぐることのおもしろからず。さまざまの余興の果ては、いかがわしき白拍子しらびょうしの手踊りとなり、一座の無礼講となりて、いまいましきこと限りもなければ、疾とくにも辞し去らんと思いたれど、山木がしきりに引き留むるが上に、必ず逢あわんと思える千々岩の宴たけなわなるまで足を運ばざりければ、やむなく留とどまりつ、ひそかに座を立ちて、熱せる耳を冷ややかなる夕風に吹かせつつ、人なき方かたをたどりしなり。
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