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三之助は江戸へはゆかなかった。ゆくとみせて城下にひそんでいた。二十七歳まで耐え忍ぶ生活をして来た彼は、そのとき初めて怒ったのである。その怒りがそのままおいちへの思慕に変った。彼はおいちに会って、自分の不幸を訴たえたかった。おいちならわかって呉れるだろう、そしてあのころのように温たかく慰さめて、今後の相談相手にもなって呉れるだろう。……こう思ってひそかに機会を待ち、ようやくその日にめぐりあえたという。……彼の話しをおいちは泣きながら聞いた、そしてやはり江戸へゆくようにとすすめたのである。
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