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「この手続き、この処刑は、今あなたが驚嘆のうちに見学される機会をもたれているわけですが、現在われわれの流刑地ではもう公然たる支持者を一人ももっていません。私がそのただ一人の擁護者であり、同時に旧司令官の遺産のただ一人の擁護者でもあります。この手続きの拡大建設などということは、私はもう考えていません。私は現存するものの維持のために全力を費しているのです。旧司令官の存命中は、流刑地は彼の支持者であふれていました。旧司令官の説得力は私も一部分はもっているのですが、あのかたのもっておられた権力は私にはまったく欠けています。そのために支持者どもはこそこそ隠れてしまいました。まだ多くの支持者がいるのですが、だれ一人としてそのことを告白しません。もしあなたが、きょう、つまり処刑が行われる日ですが、茶店へいらっしゃって、いろいろ聞き廻られるならば、あなたはおそらくただあいまいな意見だけを聞かれることでしょう。それはどれも支持者ばかりなのです。しかし、現司令官の下で現司令官のさまざまな考えかたに動かされるとなると、そういう連中も私のためにはなんの役にも立ちません。ところで私はあなたにおたずねしたいのですが、この司令官のために、また彼に入れ知恵している司令官の側近の婦人どものために、このような生涯しょうがいの仕事が」――彼は機械を指さした――「消滅しなければならないものでしょうか。そんなことを許しておいてよいのでしょうか。ただ外国人として一日二日この島にいるだけとしても、そんなことを許しておいてよいでしょうか。しかし、ほんのしばらくでもぐずぐずしてはいられないのです。私の裁判権を奪おうとして何か準備されています。すでに司令部では何回も会議が行われています。それらの会議に私は招かれません。あなたの今日のご来訪も、私には全体の情勢を示すもののように思われます。連中は臆病なものですから、外国人であるあなたをまずよこしたのです。――以前には刑の執行はこんな有様とはどんなにちがっていたことでしょう! 処刑の前日には早くも谷間全体が人でいっぱいでした。みんな、ただ見るためにやってきたのです。朝早く司令官がご婦人がたをつれてこられました。ラッパの音が高らかに鳴って、この野営地全体を目ざませます。私は、いっさいの準備ができていると報告しました。ご一行は――身分の高い役人たちは欠席してはならなかったのです――機械のまわりに並びました。この籐椅子とういすの山はあの時代をわずかにしのばせるみすぼらしい残骸なのです。機械は磨かれてぴかぴか光っていましたし、死刑執行があるたびに新しい部品を受け取りました。何百人という人びとの前で――むこうの山腹まで、全観客が爪立ちしてながめていました――受刑者が司令官自身の手でエッゲの下に寝かされました。今日では下等な兵士がやることになっている仕事が、当時は裁判長である私の仕事であり、大いに名誉なことでした。さて、刑執行が始まりました! 騒音によって機械の働きがじゃまされるようなことはありませんでした。多くの観客はもう全然見物していないで、両眼を閉じて砂のなかに寝ていました。今、正義が行われているのだ、ということをみんなが知っていました。静けさのなかで聞こえるものはフェルトによって抑えられた受刑者のうめく声でした。今日では、フェルトが殺してしまうよりももっと強いうめき声を受刑者からしぼり出すことは、もうこの機械にはできません。ところがあのころには、文字を刻む針が腐蝕ふしょくさせる液体をしたたらせていました。その液体は今ではもう使用してはいけないことになっているのです。さてやがて例の六時間目がくるのです! 近くで見物したいというみんなの希望を許すことはできないくらいでした。司令官はご自分の考えからだれよりもまず子供たちのことを考えてやれと命令されました。私はもちろん私の職務柄、いつでもそばにいてもよかったわけですが。で、私は小さな子供を左右の腕に一人ずつ抱いて、機械のところで何度もかがみこんだのでした。われわれみなは虐さいなまれている受刑者の顔から御光が射し始めたような表情をどんなふうに受け取ったことでしたろう。このついに達成された、そして早くも消え失せていく正義の光のなかで、われわれは自分たちの頬をどんなふうに輝かしていたことでしたろう! ねえ、君、なんとすばらしい時代だったろうねえ!」将校は、今自分の前に立っているのがだれなのか、忘れてしまったらしかった。彼は旅行者を抱いて、頭を旅行者の肩の上に置いた。旅行者はひどく当惑してしまい、いらいらしながら将校の身体を越えてむこうを見やった。兵士は機械掃除の仕事を終え、今度は飯盒はんごうから米がゆを鉢に入れた。もうすっかり元気を回復したように見える受刑者はこれに気づくやいなや、舌でかゆをぺろぺろなめ始めた。兵士は何度もくり返して受刑者を押しのけた。というのは、かゆはもっとあとで食べさせることになっているのだ。ところが、兵士が汚ない両手を突っこんで、がつがつしている受刑者の前でそのかゆを食べているのは、ともかくけしからぬことではあった。
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