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こがらしの強く吹いている日だった。荻窪駅に降りた頃ころには、もうあたりが薄暗く、私は往来のひとをつかまえては、あのひとのところ番地を告げて、その方角を教えてもらって、一時間ちかく暗い郊外の路地をうろついて、あまり心細くて、涙が出て、そのうちに砂利道じゃりみちの石につまずいて下駄の鼻緒がぷつんと切れて、どうしようかと立ちすくんで、ふと右手の二軒長屋のうちの一軒の家の表札が、夜目にも白くぼんやり浮んで、それに上原と書かれているような気がして、片足は足袋はだしのまま、その家の玄関に走り寄って、なおよく表札を見ると、たしかに上原二郎としたためられていたが、家の中は暗かった。
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