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私は不断からぐっすりと安眠する男で、よくうちで、私はかつがれたって目をさまさないだろうなんて、冗談を云ってるくらいです。ところが、その晩に限ってどうしたわけか、――昼間の例の事件のために少々昂奮していたものかどうか知りませんが、不断のようにぐっすりと寝つかれなかったんです。――うとうとしていると、何かが部屋の中に這入って来たらしいような気が、ぼんやりしました。そして続いて、私の妻が着物を着て、マントをひっかけ、帽子を冠かぶっていることが、だんだんはっきり分って来ました。私はこの時ならぬ時間に妻が外へ出て行くような恰好をしているので驚いて、――と云うより何か叱言こごとを云おうとしたのですが、私の口からは何か寝言めいた言葉が出てしまいました。がその次の瞬間、目を細くあけて、蝋燭ろうそくの光りで照らされている彼女の顔を見た時、私はハッとして咽喉のどがつまってしまいました。私は彼女のそんな顔つきを未いまだかつて見たことはありませんでした。――それはどう見ても彼女だとは思えないような顔つきでした。――まるで死人のような真蒼まっさおな顔色をして、呼吸いきをはずませて、私の目をさまさせはしないだろうかと、マントを着てしまうと、コッソリと私の寝台のはしをうかがうのでした。がやがて、私がグッスリ寝込んでいるものと思いこんで、ソッと音のしないように部屋から滑り出していってしまいました。それからちょっとたってから、鋭い何かが軋きしむような音を耳にしました。それは玄関の戸の蝶番ちょうつがいの音らしいものでした。――私は寝台の上に起き上がって、自分が本当に目を覚ましているのかどうかを確かめるため、拳固げんこで、寝台のフチをたたいてみました。それから枕もとの時計を手にとりました。暁方あけがたの三時でした。――一体、私の妻は、こんな暁方の三時なんて云う時間にこんな田舎道に出かけていって何をしようと云うのでしょう?
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