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夜よも大分だいぶふけていました。帰るとあなた姑しゅうとは待ち受けていたという体ていで、それはひどい怒おこりよう苦にがりようで、情けないじゃございませんか、私に何かくらい、あるまじいしわざでもあるように言いましてね。胸をさすッて、父の事を打ち明けて申しますと、気の毒と思ってくれればですが、それはもう聞きづらい恥ずかしい事を――あまり口惜しくて、情けなくて、今度ばかりは辛抱も何もない、もうもう此家ここにはいない、今からすぐと父のそばに行って、とそう思いましてね、姑が臥ふせりましたあとで、そっと着物を着かえて、悴せがれ=六つでした=がこう寝やすんでいます枕まくらもとで書き置きを書いていますと、悴が夢でも見たのですか、眠ったまま右の手を伸ばして「母かあさま、行っちゃいやよ」と申すのですよ。その日小石川にまいる時置いて行ったのですから、その夢を見たのでしょうが、びっくりしてじっとその寝顔を見ていますと、その顔が良人の顔そのままになって、私は筆を落として泣いていました。そうすると、まあどうして思い出したのでございますか、まだ子供の時分にね、寝物語に母から聞いた嫁姑の話、あの話がこうふと心に浮かみましてね、ああ私一人の辛抱で何も無事に治まることと、そうおもい直しましてね――あなた、御退屈でしょう?」
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