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という子供の声聞こえて、婦人はハンケチに顔をおさえて行きぬ。それとも知らぬ海軍士官は、道を考うるようにしばしば立ち留まりては新しき墓標を読みつつ、ふと一等墓地の中に松桜を交え植えたる一画ひとしきりの塋域はかしょの前にいたり、うなずきて立ち止まり、垣かきの小門の閂かんぬきを揺うごかせば、手に従って開きつ。正面には年経たる石塔あり。士官はつと入りて見回し、横手になお新しき墓標の前に立てり。松は墓標の上に翠蓋すいがいをかざして、黄ばみ紅あからめる桜の落ち葉点々としてこれをめぐり、近ごろ立てしと覚ゆる卒塔婆そとばは簇々ぞくぞくとしてこれを護まもりぬ。墓標には墨痕ぼっこんあざやかに「片岡浪子の墓」の六字を書けり。海軍士官は墓標をながめて石のごとく突っ立ちたり。
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