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勝久は看板を懸けてから四年目、明治十年四月三日に、両国中村楼で名弘なびろめの大浚おおざらいを催した。浚場さらいばの間口まぐちの天幕は深川の五本松門弟中じゅう、後幕うしろまくは魚河岸問屋うおがしどいや今和いまわと緑町門弟中、水引みずひきは牧野家であった。その外家元門弟中より紅白縮緬ちりめんの天幕、杵勝名取きねかつなとり男女中より縹色絹はないろぎぬの後幕、勝久門下名取女中じゅうより中形ちゅうがた縮緬の大額おおがく、親密連しんみつれん女名取より茶緞子ちゃどんす丸帯の掛地かけじ、木場贔屓きばひいき中より白縮緬の水引が贈られた。役者はおもいおもいの意匠を凝こらしたびらを寄せた。縁故のある華族の諸家しょけは皆金品を遺おくって、中には老女を遣つかわしたものもあった。勝久が三十一歳の時の事である。
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